矢数 圭堂先生ご逝去のお知らせ

 温知会会長 矢数圭堂先生が、2022年2月15日にご逝去されましたので、お知らせ致します。

矢数圭堂先生ご略歴

矢数圭堂(やかずけいどう)
1931年(昭和6年)生まれ 医師・医学博士

【略歴】
1957年 東京医科大学医学部卒業
東京医科大学薬理学教室で原三郎教授の指導により
医学博士の学位を受ける
その後,父・矢数道明について漢方医学修業
1966年 大宮一貫堂矢数医院にて診療を開始
1968年 日本東洋医学会 理事
1974年 北里研究所東洋医学総合研究所 研究員
1976年 昭和大学医学部 非常勤講師
1982年 北里研究所東洋医学総合研究所 客員部長
1987年 日本東洋医学会 副会長
1987年 東亜医学協会 理事
2001年 日本東洋医学会名誉会員
2002年 温知堂矢数医院 院長
2002年 温知会 会長
2003年 東亜医学協会 理事長
2007年 東亜医学協会 会長
2022年 逝去 享年,満90歳

【主な著書】
矢数道明・矢数圭堂博士の病気別症状別 漢方処方(主婦の友社)1979年
矢数圭堂監修 漢方処方大成(自然社)1988年
矢数圭堂・松下嘉一監修 漢方治療指針(緑書房)1999年
矢数圭堂監修 やっぱり漢方が効く(主婦の友社)2008年

 

         矢数圭堂先生を偲ぶ              

                           原 桃介

 敬愛する矢数圭堂先生がお亡くなりになられた。かねてより療養中でおられたから覚悟はしていたもののまことに寂しく悲しい限りである。とくに私は昭和6年生まれの同い年であるのでなおさらである。

 私は昭和42年に菊谷先生と一緒に温知会に入会させていただいたが、そのころは漢方がまだよく世間に知られていなかったので、道明先生はよくデパートで漢方展を開催して啓蒙されていた。池袋のデパートであったか私が見に行ったときは丁度終わったところで、圭堂先生が一人で黙々と後片付けなさっているお姿だった。のちに学会や集会でも先生は準備や後片付けを黙々となさっていたお姿を今でもよく思い出す。漢方講習会で講師として講義をなさっていたので私も何回か拝聴して勉強した。判りやすいご講義であった。

 道明先生の亡き後、温知会会長に就任され会を指導された。忘年会ではよく美声で歌われ、見事な色紙をいただいたことは懐かしく思い出される。先生は「修・破・離」という、東京医大薬理学 原 三郎教授の教えを信条とされていた。「修・破・離とは、まず師から学び、その教えを修め、次にその教えを破り、さらにその次の段階ではそこから離れて自分のものを作り上げるという三つの段階を経て、自分の学問が完成されるということである。」と温知会会報(NO.2)のなかで述べておられる。先生は日本東洋医学会副会長、東亜医学協会理事長、会長などを歴任されてわが国の漢方医学の発展に尽くされたが、次の二つの大著の監修をされた。「漢方処方大成」(自然社1988年)は圭堂先生を中心とする温知会の若手グループが十年の歳月をかけて、日本および中国の医書に記載されている処方すべてを集め、その原典を点検し、なおかつ実用性のある処方数4500というわが国最大の漢方処方集である。「漢方治療指針」(緑書房1999年)は現代日本の漢方治療を網羅した東洋医学会の総力あげての大著である。

 ここに矢数圭堂先生のご冥福を心からお祈り申し上げます。

                            『漢方の臨床』誌 2022年4月号より転載