矢数道明先生のご著書
矢数先生は、その生涯において、多くの書を書かれた。
矢数先生が、『漢方治療百話第六集』に、ご自身で書かれた書籍目録を紹介する。
――矢数道明著書目録(年代順)一一
①漢方医学処方解説(319頁) 日本漢方医学会 昭和51年
②漢方診療の実際(共著・411頁) 南山堂書店 昭和61年
③南方食用薬用有毒植物1・2(108頁) 第76兵站病院 昭和19年
④漢方診療の実際 増補版 共著(426頁) 南山堂書店 昭和29年
⑤漢方大医典(共著分担,33頁) 東部書房 昭和32年
⑥漢方後世要方解説 増補版(982頁) 医道の日本社 昭和84年
⑦臨床30年 漢方治療百話 第1集(620頁) 医道の日本社 昭和35年
⑧漢方で治る病気の話I(共著分担・10頁) 臨床漢方研究会 昭和36年
⑨漢方で治る病気の話Ⅱ(共著分担・10貢) 臨床漢方研究会 昭和37年
⑩家庭の医学(共著分担・14頁) 小学館 昭和39年
⑪漢方精撰百八方(共著分担・30頁) 臨床漢方研究会 昭和40年
⑫臨床35年 漢方治療百話 第2集(784頁) 医道の日本社 昭和40年
⑬経験漢方処方集(共著・180頁) 医道の日本社 昭和40年
⑭臨床応用 漠方処方解説(670頁) 創元社 昭和40年
⑮臨床薬理学大系 第8巻・消化系(共著分担・12頁) 中山書店 昭和41年
⑯漢方で治る病気の話Ⅲ (共著分担・20頁) 臨床漢方研究会 昭和43年
⑰明治百年 漢方略史年表(127頁) 温知会 昭和43年
⑱漢方で治る病気の話Ⅳ (共著分担・15頁) 臨床漢方研究会 昭和44年
⑲漢方診療医典(共著・651頁) 南山堂 昭和44年
⑳東洋医学とその周辺(共著・録音テープ15分)医学研究社 昭和44年
㉑臨床40年 漢方治療百話第3集(605頁) 医道の日本社 昭和46年
㉒臨床45年 漠方治療百話第4集(711頁) 医道の日本社 昭和50年
㉓ブーゲンビル島第76兵站病院の記録(267頁) 医道の日本社 昭和50年
㉔明治110年 漢方医学の変遷と将来―漢方略史年表(231頁)春陽堂 昭和54年
㉕病名別・症状別漢方処方(共著・319) 主婦の友社 昭和54年
㉖現代産婦人科大系―産婦人科と漢方療法(共著分担・10頁)中山書店 昭和54年
㉗図録・日本医事文化史料集成 第3巻・第5巻(分担・39頁)三―書房 昭和54年
㉘臨床50年 漢方治療百話 第5集(664頁) 医道の日本社 昭和55年
㉙近世漢方医学史(434頁) 名著出版 昭和57年
㉚臨床応用漢方処方解説増補(761頁) 創元社 昭和60年
㉛臨床55年 漢方治療百話 第6集(682頁) 医道の日本社 昭和60年
㉜小学館『日本大百科全書』・講談社『医科学大事典』分担 昭和63年
先生は、その後、漢方治療百話第7集(1990)・第8集(1998)を出版されるなど、亡くなられるまで熱心に著述活動を続けられた。
道明先生の著作に関しては、真柳先生が詳細なリストを作成し、「矢数先生略伝」に掲載しておられる。以下に、代表的なものについて、紹介する。
1. 漢方治療百話
矢数道明先生が、学術誌や雑誌などにかかれた論説を集大成した叢書。昭和35年(1960)に第一集が出版され、その後、平成7年(1995)の第八集に至るまで、ほぼ5年おきに出版された。
内容は、様々な疾患の漢方治療、重要処方の解説、膨大な症例報告、室町時代末期から昭和期に至るまでの幅広い医史学的研究、様々な分野にわたる叢談、紀行文、などなど、とどまるところを知らない。
第1集
第2集
第3集
第4集
第5集
第6集
第7集
第8集
2. 臨床応用漢方処方解説(創元社)
日本の漢方医学を代表する処方解説書。本書の凡例の最初に書いてある言葉は以下のようなことである。
本書は古方、後世方、本朝経験方の中から、わが国現代の漢方医家が、日常頻繁に用いている主要処方150を選んで、臨床応用の面から詳説を試みた。その中には古方87方、後世方四九方、本朝経験方14方があり、これに附随する類方加減方が105方あるので、合わせて255方となった。
この150方を本篇として主力を注いで解説を行ない、附篇としては、そのほかしばしば用いられる常用処方ともいうべきもの100方を選んでみた。これは後世方(八四)と本朝経験方(10)が主で、古方はわずかに六方しかない。この100方については、その処方と応用目標とを、きわめて簡潔に、原稿用 一紙一枚で書き上げる方針をとった。
さらに、常用漢方薬の基原と薬効および応用一覧表を附け加え、終りに引用文献と薬方別、病名別、症候別、日標別、術語、雑の部等の索引を掲げて応用に便ならしめた。
現在、処方解説書は数多く出版されているが、原典に基づき、江戸時代から現代にいたるまでのそれぞれの処方の使用経験を大事に取り扱い、平易な語り口で各処方を解説する点で、この書の右に出るものはない。
3.近世漢方医学史
日本における漢方医学の展開と後世派医学の特質を、曲直瀬道三とその学統を中心に論じた書。田代三喜により金元李朱医学(後世派)が日本に導入されて以来の漢方医学史を、豊富な資料に基づき論述。
矢数先生は、この著述により、昭和56年に慶應義塾大学より文学博士の学位を受領された。